Q1. 訪問診療の開始前になぜ契約が必要なのですか?
制度的なことをまずお話しますと、訪問診療の内容をよくご理解いただいたうえで、「訪問診療同意書」に患者さんとご家族の署名をいただく必要があるからです(文書の作成と診療録への添付が要件とされています)。
当院の特色として、訪問診療をお引き受けする前に、看護師がお住まいに伺い、訪問診療でできること・できないこと、および料金などをすべてご説明し、ご納得いただいてから契約いただくことを、開院以来続けています。それは診療行為ではないため医師は同行しませんし、実際の訪問診療開始まで料金はいただいていません。それには明確な理由があります。訪問診療がはじまってから「こんなはずではなかった」という事態を無くしたいからです。
我々が伝え聞いていることも含めますと、よくあるのは、次のようなことです。
・「在宅でも病院や外来と同じことができると思っていた」(在宅医療の内容について)
・「調子の悪い時だけ来てくれたらよい(定期的に訪問させていただくことに対して)」(在宅医療の制度面について)
・「料金が高すぎる(外来受診と比べて)」(料金面について)
入院や外来診療のイメージはみなさんお持ちですが、訪問診療自体のはじめての方が多く、やむをえないのですが、全くイメージがない、あるいは、現実とかけ離れたイメージをお持ちの方がいらっしゃるのが実際です。誤解を恐れずに申し上げれば、医療・福祉の関係者で我々にご依頼をくださる立場の方々であっても、状況はさほど変わらないことがあります。
外来や入院から訪問診療に移行する際、生活や介護の面はもちろん、医療についても薬や処置、場合によっては治療方針すらも修正が必要になることが多々あります。そのすり合わせがうまくできていないと、お困りになるのは患者さん・ご家族であるのはもちろんのことです。せっかく訪問診療という形でお出会いする以上、患者さん・ご家族に納得していただきたい、安心していただきたいという気持ちは開院以来少しも変わっておりません。
在宅医療につなぐ側、お受けする側の双方が、介護と医療にまたがる十分な知識と経験を持ち、お互いの状況や立場を理解し合いながら、患者さんとご家族のためのよりよい在宅医療の形を作っていかなければいけないのですが、実際には難しいことが多いようです。訪問診療のクリニックとして、その役割を誰が担うのか、それぞれ工夫を凝らされているのですが、当院は、開院以来、廣井看護師が全例それを担っています。これは本題から少し外れますが、廣井看護師は診療同行も全例しており、電話などの問い合わせも一元的にすべて担っています。医師1名、看護師1名の連携の良さを最大限に活かした方式を開院以来継続しています。
[文責:辻本健児(医師・院長)]
Q2: なぜインテーク(相談業務や契約業務)を看護師が行うのですか?
初診導入の優先順位や訪問診療が患者様にとって適切な選択肢であるかを医療面、生活面から判断、相談するためです。
[文責:廣井覚美(看護師・相談員)]
Q3: なぜ事務員さんや複数の看護師、医師を雇用しないのですか?
一人の医師、看護師が一貫して最初から最後まで担当していく方向性だからです。
事務員を置かないのは、患者さん・ご家族、あるいは連携事業所からのお問い合わせやご報告を、迅速かつ確実にお受けし、緊急事態の解決やご不安の解消をできる限りお待たせすることなく図りたいからです。経由する人が多くなればなるほど、伝言ゲームのように情報が正確に伝わりにくくなったり、対応が遅れたりしてしまい、在宅医療においては致命的になることもあるというのが、実際に訪問診療をしている我々の実感です。
たとえ訪問診療中であっても、廣井看護師が対応させていただいていますので、患者さんの診療自体に支障をきたすことはありません。
[文責:廣井覚美(看護師・相談員) / 辻本健児(医師・院長)]
Q4:2人で24時間管理していて夜間の電話や休日の診察など大変ではないですか?
お看取りが近い方などがいらっしゃる時期はご家族とともにその時間を過ごしていくので生活面も少し変化があります。ですが日中の訪問頻度を変化させることで夜は比較的ご家族にも安心してお過ごしいただけるよう助言をさせていただいているので当院職員も安心して過ごしております。
また、抱え込みで疲弊することにないよう常に仕事の役割分担等を確認しながらすすめておりますのでワークライフバランスは複数人で対応するのとさほど変わらず過ごしております。
[文責:廣井覚美(看護師・相談員)]
Q5:よく連携をとられている居宅支援事業所や訪問看護事業所などはありますか?
病院の連携室よりよく質問を受けますが、当院は特に決めておらず、基本は患者様の住所地を基準にお声をかけることが多いですが特に訪問看護事業所においては患者様、家族様とニーズをよく相談しお声をかけさせていただくことが大半です。
[文責:廣井覚美(看護師・相談員)]